相談会の思い出。

11月最後の日曜日。
先週は、新型コロナウイルス感染防止のために、一部の個別相談会を中止としました。
不測の事態とはいえ、ご予約いただいた受験生・保護者の皆様には大変ご迷惑をお掛け致しました。
この場をお借りして改めてお詫び申し上げます。

高校受験のための志望校選びも佳境に入ってくるこの時期、今日も本校では個別相談会が行なわれています。
入試に先立って事前に行う個別相談は、受験生にとってはとても意味のある相談会です。
各高校が設定する入試目安基準に対して、自分の成績が到達しているかどうかを知るための重要な機会です。
相談に臨む受験生の皆さんは、とても緊張した面持ちで席に付きます。
もちろんこちらも、緊張感を持って臨んでいます。
相談会でのやり取りは、成績を判定するだけでなく、本校の教育方針などを説明をする大切な場でもあります。
わずか一回の個別相談で本校を問われるという意味では、我々教員にとっても真剣勝負の場でもあります。

個別相談と言えば、今でも忘れられない受験生との出会いが思い出されます。
今から7年程前の個別相談での出来事です。
時期は12月の半ばだったと記憶していますが、一人の女子の生徒さんと面談をする機会がありました。
お母様が同席していました。
併願での受験希望の生徒さんだったのですが、ひと通りの説明を終え、併願希望の高校名を尋ねました。
すると、いくつかの高校名が挙がるものの、なかなか具体的な高校名が出てきません。
併願の高校名を聞いたところで、個別相談全体には何ら影響はないのですが、勉強のアドバイスをする上ではとても重要な情報なので、私は答えが出てくるのを待ちました。
行ったり来たり、いくつかの学校名が挙がる中、最終的に彼女は「熊谷女子高校」と書きました。
当時の彼女の成績では、明らかに合格圏内に到達していない地域でも有数の進学校です。
その学校名を見た時に、私のスイッチが入ってしまいました。
「熊女に行きたいのなら、どうして最初から熊女と書かないのか!
 そんなことでは絶対に熊女に受かるわけない!」
今思えば、とても失礼な言葉です。
本校の個別相談に来ていただいているのに、そんな厳しい言葉をかける必要は全く無いはずです。
それでも私には、彼女の煮え切らない態度がどうにも許せなかったのです。
言ってしまった後に後悔しましたが、時すでに遅し。
そのまま私の思いを伝えました。
「今の成績では絶対に熊女には受からない。
 本当に行きたいのなら、今日から本気で勉強しなさい。
 そして、もしも結果がよくなかった時には、本校で一緒に頑張っていこう。
 本校では大歓迎で待っているよ!」
と声を掛けて、個別相談を終えました。
その後、本校の入学試験を終えて、彼女も無事に併願で合格し、公立高校の入試に臨んだはずでした。

毎年、本校には単願希望で入学してくれる中学生がたくさんいます。
同時に併願受験での入学者も多くいます。
その結果は入学手続きが終わるまで分からないのが常です。
その年も無事に入学手続きが終わり、その中に彼女の名前はありませんでした。
きっとどこかの公立高校に合格したんだな・・・くらいに思い、すっかりそのことは忘れていました。
併願受験の場合は、それくらいよくある普通の結論でした。

受験シーズンも終わり、4月を迎えました。
入学式を翌日に控え、私も慌しく式典の準備をしているところでした。
そこに、彼女が現れたのです(!)
それも「熊女」の制服を着て。

お母様いわく、今まさに熊谷女子高校の入学式を終えたところで、どうしても私に御礼を言いたくて、学校へ来てしまったとのことでした。
言ってみれば、本校を蹴って別の学校へ入学した生徒ですから、それなりの対応でもよかったのかもしれませんが、とにかく私は嬉しかったのです!
彼女が頑張って第一志望の学校に合格してくれたことが。
努力をすれば夢は叶うということを証明してくれたことが。
お母様がお話してくれました。
「あの時先生に言われた一言で、娘のスイッチが入りました。
 中学では誰もこの子が合格するとは思っていませんでした。
 実際、この子より成績がよい子でも熊女に受からなかった人もいました。
 それでも、先生のあの一言で、この子のスイッチが入り、あの面談が終わってから本気になりました」と。

本校は私立の学校です。
生徒募集はとても重要な学校経営の根幹を成すものです。
その意味では、他校へ入学した生徒のことを喜んでいる場合ではありません。
それでも私は嬉しかったのです。
努力をすることで未来が開けることを知った彼女が、その自信を胸に今後活躍してくれると信じたからです。

教育とは、未来を創る人材を育てることです。
本当ならば、本校で一緒にその未来を創っていけることがベストなはずですが、異なるアプローチがあってもよいはずです。
彼女はそのことを私に教えてくれました。
毎年この時期になると、その受験生のことを思い出します。
彼女はきっと、日本の未来を担う人材となってくれることを信じています。

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